「知恵袋」第4号

自治体の危機管理広報 3件 他

自治体学会 被災自治体・応援自治体向け 2011.4.10
一歩先読みアドバイス 「知恵袋」 第4号
この「知恵袋」は、東北関東大震災の被災自治体や応援自治体(避難者受け入れ自治体を含む)の職員らを対象にしたアドバイス情報集です。「自治体学会」の会員や、過去の大規模災害での業務を経験した人たち寄せられた情報をもとに「次に何が起こりうるか」「自治体職員としてどんな点に気をつけなければならないか」を、分野別・タイプ別にコンパクトにまとめました。コピーやファックスで必要な方に届けて下さい。 転記や転送も自由です。
発行責任者:相川康子(自治体学会運営委員)

 

見出し横のアルファベットは、概ね次の地域に向く情報の目印です。
A:被災地に関する共通・一般情報
B:激甚被害地域向けの情報(津波被害、集団移転など)
C:中規模被害地域向けの情報
D:応援自治体、避難者受け入れ自治体向けの情報
情報の提供やリクエストは、できるだけメールでお寄せ下さい。メール環境にない方は電話やファクスでも受け付けます。
jichi_shien@yahoo.co.jp ※単語間(iとsの間)は(_)アンダーバー
発行責任者:相川連絡先 Tel&Fax 078-955-7990

 

第4号の内容
自治体の危機管理広報 3件、 自治体の年度当初業務 (新規採用者) 1件
環境・衛生対策(仮設トイレ)1件、 避難所運営、被災者支援 2件
※明日(4月11日)で発災1カ月になります。応援職員の人も含め発生時間14:46には黙とうを行うなどして、追悼の気持ちと復興への決意を共有しましょう。
※被災された方の気持ちは様々です。1カ月で区切りをつけようとする人もいれば、まだ時間が止まったままの人もいます。つらい気持ちに寄りそってあげて下さい。


<自治体の危機管理広報>
互いを思いやる「震災ユートピア」の時期が終わり、イライラを募らせた被災者が、自治体職員に怒りをぶつけてくることがあります。マスコミの中にも被災者に同情するあまり「行政を批判すること」を使命のように考えている人がいます。自治体の危機管理における広報は非常に重要です。災害対策本部の中枢に広報担当部局を置きましょう。
■できるだけ早く、独自の広報紙を発行しよう   
行政機能がマヒしていた時には、マスメディア(新聞・テレビ・ラジオ等)が被災者に対する唯一の情報伝達手段だったかもしれません。しかし、行政広報とマスメディアとでは、基本的に伝える視点が異なるため、できるだけ早く自治体の正式な広報紙(「○○町災害対策ニュース」など)を作成しましょう。これは、憶測やデマが広がるのを防ぐ手段でもあります。HPや掲示板(避難所、集会施設ほか目立つ場所)、ポスティング、手渡しなど、あらゆる手段を使って広く知らせることが大切です。
いつ、どの時点で、何を知らせればいいか…を考えることは、復旧・復興の道筋を考えることでもあります。参考までに、阪神・淡路大震災当時、神戸市が発行していた災害対策広報のバックナンバーは、以下のURLで閲覧できます。
http://www.city.kobe.lg.jp/safety/hanshinawaji/data/saigaikoho/s-index.html
■危機管理広報…テレビカメラに気を付けよう    A
一部の記事や番組は、分かりやすく報じるためか、安易に「善玉/悪玉」を分ける傾向があり、公務員は「悪玉」として槍玉に挙げられやすいようです。メディアとくにテレビカメラの前に立つ際には、態度や話し方に気をつけましょう。過去の災害では、疲れて寝ている姿や、話すときに歯が見えた表情が映っただけで「なにをさぼっているのか」「笑っている場合ではないだろう」といった苦情が寄せられたそうです。過度に委縮する必要はありませんが、メディアへの応対は、危機管理広報のトレーニングを受けた職員が行った方がよいでしょう。マニュアル本なども多く出版されています。
■デマに注意。悪質なモノにはデータで反証を A
被災地には、いろんなデマが流れ、それらがネットやツィッターで増幅されることもあります。特に注意が必要なのは「職員や議員が特権を利用している(自宅の罹災証明を甘めに判定した、物資を独占している…)」「この機に都市計画が進められて、内心喜んでいる」といった中傷や、「レイプや強盗が多発している」など被災者の不安をあおるデマです。あまりに悪質なモノについては、データや数値を用いて反証しましょう。そのためにも独自の広報手段を持つ必要があります。

 

<自治体の年度当初業務>
■甚大被害地域での新規採用者への対応  B
通常であれば、人事異動発令とともに新規採用者が各所属へ張り付けられ、4月からの業務がスタートしているはずです。しかし、今回の災害は、その作業のまっただ中で起きており、甚大被害地域の自治体では、災害対応と22年度体制での通常業務をミックスしながら、当分の間(半年あるいは23年度末くらいまで)は進めざるを得ないと思います。
職員の疲労が心配される中、新規採用者は、新たな戦力として、大変重要な人材です。定着していないだけに、年度当初であれば必要な部署への異動もしやすい存在です。人事担当者は、新規採用者に対して、職員として最低限知っておくべきことを伝えた上で、退職者補充にだけではなく、新たなプロジェクトチームとして、今一番必要な部署・業務に充てるなどの判断も必要ではないでしょうか。元気を持ってきてくれる人材として、活躍してくれるよう、メンター(導き役)の確保など、できる限りの手立てを講じて下さい。

 

<環境・衛生対策>
■避難所に必要な仮設トイレの数…100人に1基を確保    A
上下水道が復旧していない場合、仮設トイレの設置が急務です。数の目安ですが、阪神・淡路大震災の時は、神戸市内の避難所の仮設トイレは、平均して避難者70人あたり1基、配置されました。その経験からは、おおむね100人に1基が必要といえます。これはトイレの利用頻度による必要数です。
仮設トイレが設置されても、構造や道路事情などから、汲み取りが困難な場合もあります。その場合、一基の仮設トイレでどれくらい使用できるでしょう。結論からいえば、1基の仮設トイレで、約300人の避難者の、一日分の屎尿を溜めることができます。
計算根拠:人間が一日に排泄する屎尿の量は、小便0.8~1.5リットル、大便100~180g(「トイレの研究」の桜井敏郎さんの論文による)。屎尿処理施設の設計基準では、一人一日あたりの屎尿の量は1.4リットルとなっている。工事現場などで使われている仮設トイレのタンク(便槽)容量は360~450リットルなので、1基あたりの使用可能回数は250~320回ということになる。
連絡先や参照URL:
阪神大震災のトイレについてまとめた論文
http://www.toilet-kyoukai.jp/up_file/topics/55/20110316_318709.pdf
日本トイレ協会
http://www.toilet-kyoukai.jp/news/event/b1/detail_01054.html
日本トイレ研究所(災害トイレ情報ネットワーク)
http://www.toilet.or.jp/dtinet/311/
情報提供者:山本耕平さん (株)ダイナックス都市環境研究所

 

<避難所運営、被災者支援>
発生から約1カ月…仮設住宅の建設には時間がかかることから、避難所での生活は、まだまだ長引きそうです。工夫を凝らして、尐しでも居心地良くしてあげて下さい。 今後は「出ていける人から出ていく」傾向が強まるため、残る人の中には「取り残され感」を感じる人も出てきます。明るい雰囲気づくりに努め、座り込んだり横になったりしている人と話をするときには、必ずあなたも屈んで目線を合わせましょう。また、一時的に被災地を離れリフレッシュした方がいい被災者もおられると思います。観光庁の支援策として無料で泊まれる宿泊施設が用意され、以下の政府サイトにホテル業の業界団体によるリストがあります。http://www.mlit.go.jp/kankocho/topics06_000025.html
■避難所を居心地良く…段ボールや紙パックなどで工夫を   A
救援物資が入っていた段ボール箱や飲料容器の紙パックなどは、尐し手を加えれば(切れ目を入れて組み合わせる、ガムテープで固定するなど)、間仕切りや目隠し用の衝立、収納棚、掲示板、テーブルなどになります。強度を高めれば、簡易な椅子もできるので、応用版として、和式トイレが使えない(しゃがめない)高齢者や子どものための簡易トイレを作ってみてください。
また、高齢者を寝たきりにしない(座った姿勢を維持してもらう)ための、背もたれや抱え枕の代用品としても活用できます。その人の身体に合うように角度や大きさを調整し、バスタオルなで包んであげるとよいでしょう。また段ボールを床に敷くときも、部分的に重ね合わせて高低差をつけたり、三角形の棒状にして膝の下に当てたりすると、寝心地が良くなります。
ほかにも、紙パックの角の部分をうまく利用してスプーンにする、ペットボトルで簡易シャワーを作るなど、手近な材料で手作りできるものがたくさんあります。被災者の人にもアイディアを募り、「手作り工作隊」を組織するなどして、避難生活を尐しでも居心地良くする工夫をしましょう。以下のサイト(OLIVE生きろ日本 被災地の生活で作れるデザイン)が参考になります。http://sites.google.com/site/olivesoce/
■避難所運営のコツ…支援者は自立のための支援を   A、D
応援職員の方は、ボランティアとともに、避難所の運営を担うことも多いでしょう。気の毒に思って、何でも支援者がやってしまいがちですが、今の段階では被災者の自立を意識しつつ、側面から支援する姿勢が求められます。以下のサイトは、阪神・淡路大震災で避難所ボランティアに入った経験がある静岡県立大学の山本六三さんから情報提供があった「避難所運営マニュアル」です。電気だけが復旧(水道、ガスはまだ)した避難所で、食料、物資、夜警、清掃などの業務を、誰がどう担ったか…の参考になると思います。 http://www.npo.co.jp/hanshin/2book/2-179.html

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コメント: 4
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