「知恵袋」第3号

ボランティアの受け入れ・活用 2件他

ボランティアの受け入れ・活用 2件、

被災デジタル媒体の救出法 1件、
仮設住宅の建設・入居・運営 2件、

環境・衛生(がれき処理や廃棄物関連) 3件
被災自治体の皆さん、休んで下さい、食べて下さい、眠って下さい。長期戦です。あなたが元気でいなければ、被災者を元気にすることはできません。
応援職員の皆さん、先発隊から情報を得た上で被災地に入って下さい。次の人への引き継ぎがうまく行くよう工夫(日誌を残す、マニュアルを作る等)して下さい。

 

自治体学会 被災自治体・応援自治体向け 2011.4.4   

一歩先読みアドバイス 「知恵袋」 第3号
この「知恵袋」は、東北関東大震災の被災自治体や応援自治体(避難者受け入れ自治体を含む)の職員らを対象にしたアドバイス情報集です。「自治体学会」の会員や過去の大規模災害での業務を経験した人たち寄せられた情報をもとに「次に何が起こりうるか」「自治体職員としてどんな点に気をつけなければならないか」を、分野別・タイプ別にコンパクトにまとめました。コピーやファックスで必要な方に届けて下さい。転記や転送も自由です。
発行責任者:相川康子(自治体学会運営委員)
見出し横のアルファベットは、概ね次の地域に向く情報の目印です。
A:被災地に関する共通・一般情報
B:激甚被害地域向けの情報(津波被害、集団移転など)
C:中規模被害地域向けの情報
D:応援自治体、避難者受け入れ自治体向けの情報
※情報の提供やリクエストは、できるだけメールでお寄せ下さい。メール環境にない方は電話やファクスでも受け付けます。
jichi_shien@yahoo.co.jp ※単語間(iとsの間)は(_)アンダーバー
発行責任者:相川 連絡先 Tel&Fax 078-955-7990
 

 


<ボランティアの受け入れ・活用>
道路や鉄道、航空便などが復旧して、物資やボランティアが被災地に入り始めました。せっかくの善意が上手く活かされるために、受け入れ方や調整のポイントをお伝えします。
■多種多様なボランティアがいます  A
平時のボランティアのイメージというと、福祉ボランティアを思い浮かべる人が多いでしょうが、災害ボランティア(以下V)は多種多様です。民間の力を信じましょう。
○災害専門V:様々な被災地で支援の調整をした経験がある、ある意味“専門家”。
Vセンターの運営や支援団体間の連携調整を行い、施策上の提言なども行う。
○短期手伝いV:日帰りないしは数日滞在の人たち。自治体や社協、大学等から「ボランティアバス」で送り込まれるケースが増えている。
○組織的なV:宗教団体や自治体・企業の労働組合など、民間の組織だった活動。
中には被災地に拠点を構え、定期的に人材を送り込んでくれる団体もある。
○専門家V:専門知識で、被災地に役に立とうとする人たち。
建築士や都市計画プランナー、弁護士、司法書士、税理士、土地区画整理士、土地家屋調査士、さらに臨床心理士や消費生活相談員ら、さまざまな人材と活動があります。阪神・淡路大震災では主として法制度面での専門家職能集団による「阪神・淡路まちづくり支援機構」というネットワークができ、分野横断的に被災者の相談・支援にあたりました。関東にも「災害復興まちづくり支援機構」ができています。
・・・このほか全国の自治体や社協等から「応援職員」として派遣される人たちもいます。
・・・現場に駆けつけるVのバックには、多くの「後方支援」部隊がいます。地元で資金や物資を集めたり、情報を整理したり、現場が動きやすいよう調整を行う大事な業務です。
・・・Vの中には「困ったちゃん」もいます。行政批判が過ぎて、職員の業務に支障が出るような場合は、同じVの人から、やんわり注意してもらうのがいいでしょう。
■統制と自由のバランスを   A
短期のVには、片付けなど比較的簡単な作業を依頼し、統制の取れた行動を求める場合が多いと思います。各地で社会福祉協議会などを中心に「災害ボランティアセンター」が設立されつつあるので、そちらに調整をお願いしましょう。
ただし、センターからの手配や調整を待つだけでは、Vの本領は発揮されません。Vの本質は「言われなくてもする」(場合によっては「言われてもしない」)です。行政職員や現地のコーディネーターが見えていない課題に気づき、潜在的に困っている人たちを見つけて、自主的に支援策を講じる場合も多々あります。
一律に統制するのではなく、信頼できる団体(上記の専門家Vや組織派遣V)には思い切って自由に動いてもらい、その情報をフィードバックしてもらう度量も必要です。
 

 

<資料や史料の救出・保全・記録>
■デジタル媒体の救出法       B,C
津波などで、パソコンやデジカメといったデジタル媒体が被災している場合には、
1)起動して、作動テストを行ってはならない
2)真水で軽く洗い流す
3)乾燥させず、濡れタオルなどで包み、濡れたままの状態で速やかに専門家に見せる
・・・が鉄則です。
現在、データ救出の専門家の活動として、盛岡を中心に「デジタル媒体・紙媒体救護班」が、仙台を拠点に「データー・サルベージ班:坂本勇さんphilia_kyoto@yahoo.co.jp」が動いています。とくにデジタル媒体は、救出のリミットが近づいていますので、気づいた人はSOSを出してください。
復旧会社の一例: 「データサルベージ」(tel:022-298-7630)http://sendai.data-salvage.co.jp/
「アドバンスデザイン」(0120-290-189)http://www.a-d.co.jp/00c/co_z_news_touhoku_shien_2.html
 

 

<仮設住宅の建設・入居・運営>
■仮設住宅はなるべくコミュニティ単位で、支援者のためのスペースも   A
仮設住宅の建設や入居が始まっています。阪神・淡路大震災では当初、建てやすい場所(空いている公有地)から建て始め、高齢者らを優先的に入居させたため、結果的に市街地から遠く離れた大規模仮設団地に、ケアが必要な人たちがバラバラに入る、という事態を招いてしまいました。今後の復興まちづくりを考える上では、できる限りコミュニティ単位でまとまって暮らせるようにすべきです。民有地の活用や既存施設の弾力運用など、柔軟な思考で「仮住まい」を考えてください。
仮設住宅は、たとえ「仮設」であっても「住まい」です。集会所やベンチ、共同の花壇など、入居者が交流できる(引き込まらない)場や設備、仕掛けをしてください。入居者だけで自治や自立生活が難しい場合は、支援者(医療関係者、福祉関係者、法律相談や就労相談ができる人、ボランティア)が常駐できるスペースも確保しておくと良いでしょう。
■仮設住宅を住みやすくする工夫を     A
従来型のプレハブ仮設の場合、段差が多いので、バリアフリーの工夫(踏み台や簡易スロープの設置など)が必要です。高校や専門学校、大学などと連携して、比較的安価にできる工夫を考え、例えば学生さんの工作実習として踏み台や手すりを製作するような仕組みは考えられないでしょうか。継続的な交流やボランティア活動を行う良いきっかけになります。
また、遠隔地に仮設住宅を設置する場合は、近隣住民との関係が大切です。お花見を一緒に行うなど、交流の機会を作ってもらうよう呼びかけましょう。
 

 

<環境・衛生対策>
■損壊家屋等の撤去はできるだけ事前連絡を    B,C
潰れた家屋等の撤去について、環境省は「所有者の許可なしに解体・撤去して差し支えない」との方針を示しています。しかし「せめて立ち会いたい」「できれば大切なものを取り出したい」と願う人が多いことから、できる限り立ち会ってもらえるよう工夫しましょう。例えば「○日の×時ごろに△地区の作業を行う予定」という事前の連絡(回覧、貼り紙等)を、当該地区の住民がいる避難所や集会所に伝える。倒壊家屋から大事なもの(アルバム、証書など)の運び出しを手伝ってくれるボランティアを確保する(VCとの調整が必要)などです。
■災害廃棄物に関する政府の特例措置    A,B
環境省のHPには、さまざまな廃棄物の処理方法(特例)が掲載されています。
○家電リサイクル法の対象品目(テレビ、エアコン、洗濯機・乾燥機、冷蔵庫)
「ほかの廃棄物と一括で処理することもやむを得ない」としながら、できる範囲で自治体による分別・保管、リサイクルが求められています。
阪神・淡路大震災では、環境保護団体と民間事業者が協力して、オゾン層破壊の原因となる「フロンガス」の回収が行われました。一括処理する場合でも、せめて有害物質の放出が防げないか検討してみましょう。
○廃石綿(アスベスト)の混入物
古い建物やアーケード、駐車場などに、吹付や保温材のかたちで飛散性の廃石綿が残っている可能性があります。飛び散らないよう十分濡らした上で、その部分を除去し、プラスチック袋で梱包した上で、丈夫な運搬容器に入れて運搬・保管してください。専門施設での処理が必要です。作業する人は防塵マスクなどの装備をお忘れなく。
参考サイト:http://www.env.go.jp/air/asbestos/indexa.html
・・・その他、PCB使用機器(昭和30~40年代に製造された一部の変圧器やコンデンサ)や医療機関から出る「感染性廃棄物」などは、取扱いに注意が必要です。見分け方や対応については、廃棄物資源循環学会作成のマニュアルが写真入りで分かりやすいです。
http://eprc.kyoto-u.ac.jp/saigai/report/files/manualVer1

Re1-20110404.pdf
■自治体焼却炉でのがれき処理は困難。別途、仮設処理施設の設置の検討を  A
*知恵袋第1号で、計画処理や仮置き場の設置について提案しています
神戸の経験では、仮置きした木造家屋の解体がれきには土砂等の付着も多く、自治体の焼却炉での焼却処理は困難でした。今回の災害では、神戸同様、大量のがれきの処理が必要ですが、近隣自治体を含めて広範囲に被災しており、少量ずつの分散処理は期待できません。その上、水害による水濡れが加わり、処理にはかなりの困難さが予測されます。効率的な処理のために、神戸同様、基礎的な調査と、特別な仮設処理施設が欠かせないと推測されます。

情報提供者:井上求さん (株)環境戦略研究所 kobe@bu.iij4u.or.jp