2011年

4月

22日

「知恵袋」第5号

自治体の業務(応援職員、業務日誌、罹災証明) 3件 ほか

自治体学会 被災自治体・応援自治体向け 2011.4.22

一歩先読みアドバイス  「知恵袋」 5

この「知恵袋」は、東日本大震災の被災自治体や応援自治体(避難者受け入れ自治体を含む)の職員らを対象にしたアドバイス情報集です。「自治体学会」の会員や、過去の大規模災害での業務を経験した人たち寄せられた情報をもとに「次に何が起こりうるか」「自治体職員としてどんな点に気をつけなければならないか」を、分野別・タイプ別にコンパクトにまとめました。コピーやファックスで必要な方に届けて下さい。転記や転送も自由です。 発行責任者:相川康子(自治体学会運営委員)

■見出し横のアルファベットは、概ね次の地域に向く情報の目印です。

A:被災地に関する共通・一般情報

B:激甚被害地域向けの情報(津波被害、集団移転など)

C:中規模被害地域向けの情報

D:応援自治体、避難者受け入れ自治体向けの情報

情報の提供やリクエストは、できるだけメールでお寄せ下さい。メール環境にない方は電話やファクスでも受け付けます。

jichi_shien@yahoo.co.jp ※単語間(isの間)は(_)アンダーバー

発行責任者:相川連絡先 Tel&Fax 078-955-7990

第5号の内容

自治体の業務(応援職員、業務日誌、罹災証明) 3件

環境・衛生対策(トイレ、下水道、感染症)3件、 被災者支援・仮設住宅 3件

※新学期が始まり、学校避難所での教室の明け渡し、あるいは避難所の集約や福祉避難所への移転が行われつつあります。「取り残され感」に苦しむ被災者の気持ちを逆なでしないよう、ていねいに説明する必要があります。

※激甚被災地では、まだ人的・物的被害の確定が難しい状況とききます。大変だとは思いますが、被害が(概算であっても)確定しないと施策が打てません。罹災証明の発行がなければ、被災者が支援を受けにくいので、最優先で取り組んで下さい。


<自治体の業務>

■甚大被害地域への他市町村からの職員派遣について B、D

総務省が、全国市長会や全国町村会を通じて、被災自治体からの職員派遣要請のマッチングを行っています。また関西広域連合では、岩手・宮城・福島の3県に対し、それぞれ中心になって支援する県や政令市を決め、組織的な派遣を行っています。このような相手先を決めての継続的な支援は「対口支援」と呼ばれ、中国・四川地震の際に有効な手法だと確認されました。

職員派遣にかかる経費には特別交付税の措置があると、総務省HPに出ています。また、短期派遣(数週間から数カ月の派遣)は公務出張、中・長期派遣(一人につき数カ月から数年の派遣)は地方自治法252条の17に基づく派遣が想定され、中・長期派遣で必要になる協定書の案については後日示されるとの情報が、全国市長会HPにあります。

被災市町村では、復旧・復興にかかわる多種多様な業務に取り組んでいかねばなりません。とくに土地鑑定や仮設住宅の用地確保、上下水道の復旧、災害廃棄物処理などが急がれます。必要な人員を割り出し、早めに要請することが、自らも被災しながら対応にあたる職員の消耗を防ぐことになると思います。 今回の派遣要請の集約は、いったん4月上旬で集約されましたが、また要請があれば、全国市長会の会員のページで随時掲載されていくとのことですので、被災地以外の市町村の迅速な対応も求められています。

総務省 http://www.soumu.go.jp/ 全国市長会http://www.mayors.or.jp/

情報提供者:前川さゆりさん(自治体学会運営会員、堺市役所)

■日誌をつけよう A

災害業務を担当する職員は、どんな業務であっても必ず毎日、日誌をつけて下さい。公務として行ったことであれ、突発事態であれ、心境であれ、何でも構いません。日誌をつけることで、自分を客体化する▽組織全体と自分との関係を問い直す▽救援が必要な住民との関係を問い正す…など、精神の平衡を保つことができます。これは、後々、責任の押し付け合いになったりしないよう、証拠を残すことでもあります。

情報提供者:中川幾郎さん(自治体学会代表運営委員)

■罹災証明の発行を迅速に B

家屋の被害状況を証明する「罹災証明書」は、災害救助法や被災者生活再建支援法等に基づく各種支援策や、保険の証明に必要な、とても重要な書類です。被災程度(全壊、流出、大規模半壊、半壊、床上浸水、一部破損、床下浸水/火災による全焼、半焼、水損)によって受けられる支援が変わるため、判定をめぐり、住民とトラブルになることがしばしばあります。激甚被災地では、まだ証明書を発行できない自治体もあるようですが「○日ごろから発行できそう」「判定は、再調査で変えることもある」「遠方に避難した人に電話や郵送で対応する」など、必要な情報を流して、被災者を安心させてあげて下さい。

内閣府:住宅被害認定の調査方法 http://www.bousai.go.jp/hou/pdf/h23jishin.pdf 3

 

<環境・衛生対策>

■仮設トイレの台帳をつくっておくべし A

仮設トイレについて、どこに、どのようなタイプのトイレを何基設置したのか、台帳を作成し、きちんと管理しておく必要があります。建設会社などから提供されたものも、ほとんどはレンタル会社からの借りものなので、最終的にはレンタル会社に返却しなければなりません。汲み取りの作業計画を立てたり、撤去・返却の作業をスムーズに行ったりするには、仮設トイレに番号を付け、台帳を作成しておくことが重要です。阪神・淡路大震災では、それが徹底できなかったため、仮設トイレを撤去する際に一時的に仮置き場に集めなければならず、広大な用地が必要になりました。

阪神大震災のトイレについてまとめた論文

http://www.toilet-kyoukai.jp/up_file/topics/55/20110316_318709.pdf

日本トイレ協会

http://www.toilet-kyoukai.jp/news/event/b1/detail_01054.html

日本トイレ研究所(災害トイレ情報ネットワーク)

http://www.toilet.or.jp/dtinet/311/

情報提供者:山本耕平さん ()ダイナックス都市環境研究所

■下水道の被災状況を調べ、広報をしっかりと B、C

被災地では上水道の復旧が進んでいますが、下水道は遅れ気味です。中には、下水処理場が被災して、汚物の処理能力が極端に落ちているところもあるようです。住民は、水道の蛇口から水が出たら、復旧したと思い込み、風呂やトイレの水をどんどん流しがちですので、下水道被害が懸念される自治体では、急いで実態を調べるとともに、住民向けに排水を控えるよう、呼びかけて下さい。下水道被害は、激甚被災地だけでなく、沿岸部が液状化した千葉県や茨城県でも起きています。

阪神・淡路大震災でも神戸市内にある下水処理場の1か所が完全に機能停止し、やむなく運河の一部をせき止めて、仮の沈澱池を作っていました。下水本管は無事でも、管の結合部の破損や家庭との取り付け管のズレによって、汚水が地中に漏れている恐れもあります。「沈黙のライフライン」と呼ばれる下水道の被災状況に、行政職員も、住民も、もっと関心を持つ必要があります。

■さまざまな感染症に注意してください

避難所でのインフルエンザや急性呼吸器感染症、急性下痢症などのほか、片付け作業をした人が、カビ(真菌)を吸い込んでアレルギーを起こしたり、外傷後に消毒が不十分だったことから破傷風を発症したりする事例が報告されています。こまめな消毒を心がけ、作業時には面倒でもマスクをしてください。

 

<被災者支援・仮設住宅>

応急仮設住宅の建設が、用地確保や建材確保の難しさなどから遅れています。長引く避難生活で体調をくずす人もでてくるでしょう。福祉避難所の開設や一時避難のあっせんを行うとともに、自宅に戻った人への目配りも大切です。

■福祉避難所を開設して、効果的なケアを B

体育館や教室といった避難所の居心地は決して良くありません。高齢者や持病のある人は、もう体力の限界が来ていると思います。医療や看護、介護の支援を効果的に行うためにも、福祉施設や病院などに協力を求め「福祉避難所」の設置と、危機的症状の人の移転を急きましょう。家族がバラバラになるのを嫌がり、移らない人も多いので、家族ごと移れるよう配慮したり、家族の居場所(一般の避難所や自宅)から福祉避難所まで朝夕にバスを走らせたり、かかりつけ医から移転を勧めてもらうといった手立ても必要です。

■自宅に戻った人のケアも継続して A、B

居心地の良くない避難所を出て、被災した自宅に戻っている住民が増えています。津波被災地でも「1階はめちゃめちゃだが、2階はなんとか住める」と戻る人がいるようです。しかし、ほこりやカビが舞い散る劣悪な環境ですし、がれき等が片付かない中で、病気やケガが心配です。「避難所を出たらケアは終わり」ではありません。応援職員やボランティアの手も借りながら、自宅や親せき宅にいる人への目配りを続けていきましょう。

■仮設住宅の確保は柔軟に考えよう A

仮設住宅は基礎自治体が用地を確保し、都道府県が建設することになっていますが、公有地でまとまった空き地など、そうありません。民間住宅の活用など、柔軟な頭で、制度を構築していく必要があります。岩手県の大船渡市では、北里大学のキャンパスが閉鎖されて空き家になった学生用民間賃貸アパート約140戸を、市が借り上げ、仮設住宅として2年間無償で被災者に提供するようです。災害救助法は、このように民間アパートや公営住宅を借り上げ、仮設住宅とする手法を認めています。また、行政からの仮設住宅提供を待ちきれず、自力で民間アパートを借りてきた被災者に対しても、仮設並みの支援が必要だという指摘もあります。

仮設住宅は、建設と撤去だけで一戸当たり約400万円のコストがかかる上、2~3年後には処分を考えなければなりません。また、刻々と変わる被災者のニーズを踏まえながら、必要戸数を推計し、調整していくのは、至難の業です。被災者の立場にたった柔軟な制度運用が望まれます。